DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
    スポンサーサイト
    -------- -- --:--
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    別窓 | スポンサー広告
    3期687年9月
    2010-04-19 Mon 07:14
    桜を見に行きたい、と紫草が言った。


    その言葉を聞いて、まだ「友人」として付き合っていた頃に
    ライカの桜を見に行こう、と約束していた事を思い出した。


    思えば、あの頃から・・・
    紫草の事を1人の女性として意識していたのかも知れない。


    紫草と一緒に、桜を見るのであれば・・・
    正直どこの桜でも構わなかった。


    「ああ、行こうか」


    素直に喜びを表現し、紫草と出発の支度を整える。

    朝のうちに、黄眼の塔の傍にある宿を出発し
    宵闇の案内で街道を歩き始める。


    どんどん街道を、今まで旅してきた方向に
    戻る形で進んでいく。


    ・・・思ったより、遠い。

    いつの間にか、黄眼の塔は遠く離れ
    辺りが夕暮れのオレンジ色に染まりだした頃には、
    ヴァルグ渓谷まで戻ることになっていた。


    「んー…狙ったわけじゃないけど、ちょうど夜桜になりそうだね」

    「思ったより遠かったからね・・・
     フフ、まさかヴァルグ渓谷まで戻るとは思わなかったよ」


    宵闇の行動範囲の、意外な広さに驚き
    俺は案内してくれた、漆黒の翼の主を見つめる。


    「うん…宵闇のお散歩って、
     こんなに範囲が広かったんだ…知らなかった」


    「桜を見終わったら、宿を取らないとね・・・
     ここなら、前に泊まったところが近いんじゃないかな」


    そのまま、2人で渓谷を流れる川沿いを歩いていく。
    時々、風に乗り・・・
    桜の花びらが肩に落ちる。


    「そろそろ、近いのかな・・・」


    紫草の肩にも落ちた桜の花びら。
    可憐な、控えめな桜色を手にとって見せる。



    ・・・先導していた宵闇が、ふわりと旋回した。

    そして、そのまま紫草の肩に止まる。


    「ん…この先にあるの?」

    「紫草・・・着いたみたいだよ」


    肩に止まった宵闇の、目線の先を指差した。


    「え?……うわぁ…」




    それはまるで・・・
    雪のように舞い散る花びら。


    夕暮れの柔らかな光の中、俺たちは言葉もなく
    目の前にある大きな桜の木を見つめていた。

    そして、その桜の向こうに見える山陰の先に・・・
    昇り始めた月の姿。


    「……宵闇、教えてくれてありがとう」

    「ありがとう、宵闇」


    俺たちは、赤い月が・・・
    やがて白い輝きに変わる頃まで
    美しい桜の姿を、見つめ続けていた。









    スポンサーサイト
    別窓 | 日常(士凰)
    | 思いと言葉 |
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。