DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    3期684年1月
    2009-05-20 Wed 23:18
    フェル達と別れ、俺は本隊へと戻った。

    ・・・思えば随分長い事一緒に旅をしていた。
    最初こそフェルのつかみ所の無さや、傭兵稼業の者達への警戒心があったが
    ・・・いや、今でも警戒はしている。
    仲間とはいえ、所詮は一時的な利益の為に協力していた同士だ。
    だが・・・

    その警戒心すら上回る、何らかの「居心地良さ」を感じていた事を
    否定はしない。


    「気にするな。容易に背後を取らせる方にも問題がある。それに……」


    そういうと、彼・・・レクサスは少しだけ笑みのようなものを浮かべた。

    「フッ…1つ、訂正させてくれ。
     似てたのは外面だけじゃなかった。中身もよく似ている、アイツ(士皇)に……」

    「他人にしてみればどうでもいいような事で悩む。
     そういう人間臭いところが特に、な?」



    懐から煙草を取り出し口に咥え、取り出した箱を俺に向ける。
    ・・・が、微妙に表情の変化した俺の様子に気付いたのだろう。
    すぐに下げると

    「要らないか。コレ(煙草)が苦手なところまでは似なくてもいいんだが
     …まぁいい。」



    苦笑を浮かべ、口に咥えたまま火は付けず、俺の方を向いた。
    ・・・彼なりの、煙草が苦手な俺への気遣い。


    「誰に何と言われようが、お前はお前だ…もっとシンプルに考えろ。」


    俺の事を・・・父に似ている、と。
    レクサスはそう言った。
    だが、そう思っていない俺にしてみると、彼の言葉は心外だった。
    どうでも良いような事で悩む?
    悩んでいるように見えるのだろうか。

    ・・・俺は、父とは違う。
    あの人のように・・・悩む事は俺の柄じゃない。
    そう考えているはずだった。
    常に。

    けれど・・・レクサスの言った
    「お前はお前だ」という言葉に、心がざわついた。

    ひょっとしたら・・・俺の中に存在する、
    俺ですら気付かないほどの、密やかな・・・
    父に対するコンプレックスのようなものを、
    彼は感じ取っていたのかも知れない。



    「いや、おれは別に褒めて欲しかったわけじゃ…」


    そう言うと、ツクジは居心地が悪そうに一瞬目を逸らした。
    だが、すぐに視線を戻すと

    「『良い所は、自分自身で見つけ出すもの』?
     そういうもんなのか、覚えとくよ。」



    と言って、笑った。

    「しほーって名も、エリオスって名も、なんだか不思議な響きだな。
     あ、それ言ったらおれのほうが変な名前かな。
     名前って、不思議だなぁ」



    旅を一緒にするようになって、俺が彼に思う事は・・・
    「邪気」のなさ。
    この戦乱の地には珍しいほどの、清浄な空気を感じる。
    きっと、今までの人生の中で・・・
    彼の周りには、心根の良い人々が集まっていたのだろう。

    そんな彼が、今、俺の妹・留歌と急接近していた。

    留歌はこれまで俺と共に行動していたが、直接仲間達との会話に
    参加した事はなかった。

    ・・・というか、俺がさせなかったのだが。

    「えっ…い、妹!?率直に言って、なんていうか…似てねぇ(ぇ
     …いや、雰囲気はなんとなく似てるんだけど、
     目の色とか、結構違うような…?
     なんかいつもおにぃちゃんにくっついてるし…」



    上に下にと、くるくると目線を動かすツクジ。
    留歌は好奇心に満ちた目で、次のツクジのリアクションを
    待っているように見える。

    ・・・今まで留歌を皆に会わせなかったのは、
    下手に目を離すと、困った事になると思っていたから。

    案の定、ツクジに話しかけられた留歌は
    普段からぼうっとした表情を、一層緩め、満面の笑顔になっている。
    調子に乗ると、留歌がとんでもないトラブルメーカーになり得る事を
    ツクジ達はまだ、知らない。

    「ヘタすると、歳がちょっと離れた恋人同士みたいに見えるな。」


    ・・・それは、ない。



    「退魔師ってのはちょっと優しくするとつけあがる人種なのかしらね。
     この手の代償高くつくわよ。」



    そう言うと、リノは間髪入れず大声で叫んだ。

    「きゃー!痴漢よへむたいよー!この人です!この人が私に触ってきたんです。
     最初から怪しいと思ってたんです。
     突然近づいて話しかけてきたかと思うと
     何かいやらしい眼で私のことをじっと見つめてきて。
     汚らわしいっ!早く捕まえてください! 」



    ・・・ふん。
    たかが顎を持ち上げただけで、この反応か。
    初心というか、何というか・・・
    さぞ、父もやりにくい相手だっただろう。いや・・・
    父はこういう事はしないか。

    そんな事を思っていると、リノは俺から飛び退った。
    さらに俺との距離を空け、言葉を続ける。

    「私に気安く触るからよ。あっかんべーだ。
     ゴシップ誌に取り上げられて
     せいぜいみんなから白い眼で見られることね」



    やれやれ、とため息をつきながら俺は背を向けた。
    さて、どう反応しようか。



    「でもまあ、『いつもの』がアレだし、
     マスターたちも驚かないかもしれないな
     まあ、誤解されたらそれはそれで面白いんじゃない?」



    フェルがくすくすと笑いながら、そう言う。
    普段から油断のならない、底の見えない男だと認識しているが
    笑った顔は、見ているものに安心感すら与える。
    ・・・俺より年上だ、と言ったが・・・


    「実は……この間のパフェも美味しかったんだけど、
     まだ食べてなくて、気になるパフェがあるんだ。」


    真剣に目を輝かせるその笑顔は、
    恐らく誰の警戒心すらも潜ませるだろう。

    それに「パフェが気になる」、という点では
    ・・・滅多に巡り会う事の出来ない、貴重な同士とも言える。



    「…幼馴染みの蒼にもね、同じような事を言った事があって…
     蒼は『そう思ったからそう言ってるだけだ』って…
     そんな感じの事を言ってたかな。
     本人に、他意は無いんだよね(苦笑)

     …士凰もきっと、そうなんだろうなって。
     だからむしろ、褒めてくれるのは嬉しいんだよ?
     本当にそう思ってくれてるって事だから。」



    穏やかな表情で、俺を見つめる紫草。

    その目は相変わらず、透き通っている。
    それでいて、俺の中の薄汚れた部分さえ見透かされているようで
    ・・・目を逸らしたくなる自分に気付いた。


    「でもね…区別しないで褒めてくれるでしょう?
     他意が無いから、なおさら。
     そういう中にね、区別しておいた方が良いと言うか…
     世間一般では他意があると思われやすいと言うか…
     そういう言葉があって。

     …うーん…具体的にどういうの、って聞かれると
     困るんだけど」

    「………私がそういう言葉に慣れてないのは、認める…
     …もっと、上手く応対できないのかなぁって自分でも思うんだけど…
     どうすれば良いのか、わからなくなっちゃうんだ。
     どうにかしたいとは思ってても…なかなか難しくて。」



    違う。
    紫草は・・・1つも悪くなんか、ない。
    何も変わらなくていい。
    わからなくていい。

    君は・・・


    そう思った瞬間、軽く挟むように俺の頬へ両手が伸びて
    ・・・気が付くと、紫草の菖蒲色の瞳の中に、俺の姿が映し出されていた。


    「士凰…目が、笑ってない。

     ………気を悪くしたわけじゃないよ。
     そう思わせたなら……何か誤解させたなら、ごめん。
     …褒めてくれて、ありがとう」



    素直な笑みを浮かべた、紫草。

    違う、と。
    君が謝る必要は無い。そう、言いたいのに・・・
    言葉が出て来ない。


    「恋人や、好きな人に言う言葉。」

    ・・・そんな大切な言葉を、
    誰にでも使える・・・俺は、そんな最低な男だ、と。
    伝えればいい話なのに。

    恐れている?
    俺は・・・


    紫草に



    ・・・そして、仲間に拒絶される事を?





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