DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    3期683年12月
    2009-05-15 Fri 00:36
    フェル、ナスターシャ、ショウ、マルガリタと共に
    蒼眼の塔へ向かった。

    目的は聞かないし、聞くつもりも無い。
    俺は「契約」で動いている身。
    雇われた以上は、それに見合った働きをする。




    「士凰の顔の広さには感嘆するね。
     まさかあのメナスに目を付けられるとは……
     本当に”やっかい”な事になってきたよ 」



    そんな事を言っている割には、爽やかにすら見える笑顔で
    フェルが俺に語りかけた。

    ・・・こればかりは、何とも言い様がない。
    正直これは「俺の顔が広い」から起きた事件ではない。
    正確には、「俺の父」だ。
    父は以前から、「メナス」という人斬り集団のメンバーと
    交友関係にあったらしいが・・・

    まさかその因縁が、ここでこういう形で現れる事になるとは。

    フェルに対して、何と応えようか。



    レクサスと知り合って、しばらくが経つ。
    ・・・初めて合流したときから、彼の雰囲気がどことなく
    「あの男」の姿に似ていると感じていた。

    父と敵対しているような・・・
    それでいて、優しいとすらも感じられた言葉の数々。

    父も彼との会話を楽しんでいるようだった。

    ・・・父が精霊界に行ってしまう直前、
    その男が突然姿を消してしまった、と聞いた。
    最後に見たのは、黒衣の女性と・・・そして・・・


    ・・・詳しい事は、それ以上聞いていない。



    「ねぇ? それにしても、よく私のこと、見つけられたのね。
     もちろん、何時だって遊びに来てくれていいのよ。
     士凰とお話できるの、嬉しいわ。話したいことってなにかしら。
     戦いのこと? 
     えっと……あと、私に話すようなことってどんなことがあるかしら。
     あっ、ひょっとしてお料理のこと、とか? 」



    俺と同じ紫水晶の瞳を、嬉しそうに輝かせているマリエル。
    初対面だというのに・・・
    いきなり、戦闘しながら料理する方法を聞いて来たのは記憶に新しい。

    変わった女性だと思う。
    俺より年上のはずなのに、何となく年下のようで。
    何処か頼りなげな雰囲気なのに、けれど、凛としていて。

    そんな時、ふと、フェルが彼女の料理を、
    戦々恐々としながら待っていた事を思い出した。

    ・・・一緒に料理する前に、自分でも練習しておいた方がいいかな。



    「おっと…
     不用意に近づかないで貰いたいね、気持ち悪い
     はぁ?興味でもある??自惚れるのも大概にしたらどうだい?
     誰がお前に…

     ふん、私まで祓おうとしないでくれよ?退魔師サン」



    行きつけの店では、いつも俺に悪態をつき、
    出会ったと思うと近付くなという・・・
    本当に、兄妹だというのにマリエルとは全然性格が違う。

    アンドリュー。
    同じ、紫水晶の瞳。

    彼はどうしてこれほどまでに、俺を忌み嫌うのだろう。
    いや・・・
    俺だけじゃない。
    彼は全てを拒絶している風にも見える。

    一瞬、「同類」という言葉が浮かんだ。

    きっと、拒絶する理由は、違うだろうけど。



    「え?っ?妹さんがいるの?うわっ、見たい見たい!
     ・・・え?そんな話じゃないって?あはは・・・;
     
     でもでも、妹にまでナンパ魔って言われるなら、
     少なからずそう言われるだけのことはしてるってことじゃない?
     自分の態度の責任が、自分に降りかかってるだけですよ?だ」



    そう言いながら、ジーナは両手で自分の頬辺りをつまみながら
    舌を出しておどける。

    ・・・悪意の無い表情、そして笑顔。

    妹の留歌を見たいというから、今度店に連れて行こうか・・・
    とも思ったが、2人が出会った所を想像して、背中に寒気を感じた。
    何となく、会話が弾みそうな2人だと思った。

    ・・・意気投合されても、困る。

    ナンパ魔、と言われる事にも段々慣れてきた。
    けれど、男という生き物は、所詮そういうものだろうと思う。

    俺の父が、その点では極めて珍しいタイプの「男」だっただけで。

    ・・・俺はそこら辺にいる、どこにでもいる男と何ら変わらない。
    例えこの体に、人間と精霊の血が混ざり合っていようが
    退魔師という業を背負った者であろうが、
    そんなものは関係ないのだろうと思う。

    そして、そんな俺を知った時・・・
    ジーナは何と思うのだろう。

    彼女の笑顔は、曇るのだろうか。



    「……ふふ、おはなしできて嬉しいわ。
     わたしは、マルガリトゥム・クィンクア……もうフェルくんから聞いている?
     いつも、あなたのうしろすがたばかり見ていたのよ。
     近くで見てもやっぱりやわらかくて、きれいないろだわ……髪も、目も。

     でも困ったわ、あなたのこと、なんてわたしは呼べばいいの?
     ……あなたが呼ばれたいのは、どんな響きかしら?」



    そう言って、差し出した俺の右手をぎゅっと右手で握り返した少女。
    マルガリタ。

    先日、行きつけの店で偶然、フェルと語らっている彼女と出会い・・・
    俺は彼女に「士凰」と呼んでもらえる事になった。

    マルガリタはまるでお姫様のようで・・・
    そして一心にフェルを慕う姿は、雛鳥を連想させる。

    桃色の飴のような、きらきら光る瞳で俺を見つめながら
    彼女は

    「笑って欲しい」

    と、言った。

    例えそれが、作りものの笑顔だとしても・・・?
    それでも、君は喜んでくれるのか?


    だったら、笑ってあげよう。何度でも。
    君が喜んでくれるなら。
    可愛い・・・「フェルの」お姫様。



    「んー…でも、音は大事だよ?祝福がこめられてるなら、なおさら。
     力のある言葉はね、音の一つ一つにも意味があるんだって。
     そうでなくても…大事な名前だもん、ちゃんと呼びたいじゃない?

     …まぁ、普段は慣れてる『士凰』の方で呼ぶと思うけど」



    そう言って、紫草は笑った。
    何故だか、紫草に名前を呼ばれるのは心地良い。
    その理由が、元々男として育てられていた所縁かどうかはわからないが
    ・・・まるで長年、友だったような錯覚にすら陥る。

    ふと・・・
    彼女が以前、1人ひっそりと泣いていた場面を思い出した。

    後にも先にも、彼女を「女性」として意識した時だった。

    その時は、詳しい理由は聞かなかったが
    後で紫草は理由を語ってくれた。

    ・・・予想していた事と、何となく当たってはいた。

    もしかして、紫草は何か俺からの言葉を待っていたのかも知れない。
    けれど・・・
    言葉が出て来なかった。
    出来た事は、笑って・・・はぐらかす事だけ。

    我ながら卑怯だと思った。
    けれど、他に何を言えば良かった?
    慰めを?
    それとも・・・

    だがそんな風に自分を卑怯だと思ったのは、
    この時が初めてだった。

    ・・・紫草の前では、調子が狂う。





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