DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    癒えない記憶 -風火(4)
    2008-03-08 Sat 09:41
        癒えない記憶 ?ep.4




    次に風火が目が覚めたのは・・・自分のベッドの上だった。

    「・・・」


    重苦しい、あちこちからきしむような鈍痛を感じながらも、
    風火は起き上がる。
    体中に残る、小さな傷跡。

    (夢・・・じゃなかったんだ・・・)




    「風火!もう起きあがれるの?」

    「お・・・かぁさん・・・」


    美味しそうな甘い香りの漂う、オニオンスープを運んできた
    母・風雷が慌てて風火のそばにやって来た。

    「もう大丈夫?・・・何処か・・・痛い所は無い?」


    少しビックリしたような母の姿に、
    風火は笑い、答える。

    「大丈夫だよ・・・アタシは平気」

    「・・・そう・・・良かった」


    ホッとしたように、母がそばの椅子に腰を下ろす。

    ・・・恐らく一晩中傍にいて
    風火の世話をしていたのであろう。

    椅子の横には、熱を冷ます為の水や、
    汗を拭く為の布が置いたままであった。

    「ところで・・・お母さん」

    「何?」

    「・・・お父さんはどこ?」

    「・・・」


    母が少し、ためらうような表情を見せたことに、
    風火はすぐさま気が付いた。

    「アタシを助けに来て・・・
     その後、お父さんはどうしたの?」

    「風火・・・大丈夫。魔は、父さんが消滅させたから・・・」

    「・・・お母さん。アタシ、知ってるよ」

    「?」


    忘れはしない。忘れることが出来るわけが無い。
    ・・・最も信頼し、尊敬していた存在が・・・

    「死」を待ち望んでいたあの、 ドス黒い感覚。


    「お父さんは・・・「アタシを助ける」ことより

     「死ぬこと」の方を考えてた」


    「・・・風火」


    まるで、その忌み嫌う「死」の黒い感覚が、
    自分の感情を支配していくような感覚に 風火は捕らわれた。

    そして・・・その黒い感覚は、さらに言葉を支配する。

    「お父さんが何でアタシ達に優しいのか、わかった気がするんだ。

     どうして、アタシの修行の時にお父さんは、
     武術をやって欲しくないような言葉をかけていたのか・・・

     そう・・・そうだよ。




     ・・・最初っから・・・」


    「・・・」


    「お父さんはアタシ達のことなんて、
     目に入ってなかったんだ・・・!

     お父さんは・・・ずっと・・・

     ずっと、自分の死に場所しか考えてない人だったんだ!」

    「風火・・・っ」


    後は、ほとんど覚えていない。
    風火は制止する母の声を振り切り、部屋の外へと飛び出した。

    ・・・父に対する例えようもない絶望感のような感情に
    捕われているというのに、風火は感情とは裏腹に

    父の姿を・・・探していた。

    (死んでしまった・・・?本当に)


    涙が止まらなかった。


    (お父さん・・・)

    (あなたは、「アタシを助ける為」に戦おうとしたの!?
     それとも・・・

     「自分が死ぬ為」に戦おうとしたの・・・!?

     何故・・・  どうして・・・!?)


    「!!」

    「・・・お兄ちゃん!」


    部屋から出てくる士皇とぶつかる。
    そこは・・・父の部屋の前であった。

    「お兄ちゃん・・・お父さんは・・・お父さんは!?」

    「風火・・・あっ、待って!」


    返事を聞かないうちに、風火はもう父の部屋の扉を開けていた。

    そして・・・
    その場所で、風火は父の姿を見る。

    淡いゴールドブラウンの長い髪・・・広い背中。
    父は椅子にもたれ、窓の外を眺めていた。

    ・・・父は、生きていた。

    しかし、風火はそれ以上の言葉を発することは出来なかった。
    振り向いた父の右半分の顔に・・・

    大きな傷跡が走っていたのである。

    傷は右の目の下から、顎にかけて・・・
    亀裂のように走っていた。

    「・・・風火・・・目が、覚めたのか」

    「・・・お・・・とうさん・・・」


    父は・・・いつもの優しい笑顔で、風火を見つめた。

    「お前が、無事で良かった」

    「・・・お父さんっ・・・」

    「風火・・・?」


    父は・・・娘の流す涙の意味を、全て理解しているかのように
    昔のままの、優しい手で・・・頭を撫でた。


    「俺は・・・お前達を死なせないよ・・・絶対に」

    「おとうさん・・・」


    風火の涙は、止まらなかった。
    ----------------------------------------------------------

    ・・・父は「死」を望んでいたはずだった。


    風火の頭の中に入り込んできた、父の「思念」・・・
    それは明らかだった。
    が、しかし。

    風火は今、父の顔に残った大きな・・・
    自分を庇った為に出来たであろう傷跡に、
    感情を揺さぶられていた。



    本当に父は「死にたかった」のか?

    それとも・・・ひょっとして
    父には「死」をも超える、大切なものが出来ていた
    ・・・のだろ うか。

    そして、それは・・・

    自分たち・・・なのだろうか。



    そもそも、父が何故死ぬことを望んでいるのかを、
    風火はまだ知らない。
    だからこそ、小さな頃のように・・・
    父の全てを愛しているとは言えないようになっていた。


    だが・・・
    その日以来、風火は益々武芸に励んだ。

    (誰も、もう、自分の為に傷つけさせない)


    ただ、その思いだけが、彼女を突き動かしていた。

    そして16才になる頃。
    風火は士皇の後をついて行き、
    アストローナという地で修行すると言い出した。

    母は少し反対したが・・・父は止めなかった。
    兄の時と同じだった。
    ただ・・・

    黙って、見送ってくれた。


    (アタシは、強くなる!)

    (そして・・・いつか、お父さんと同じ位強くなったら・・・
     聞いてみるんだ)


    風火は、ぎゅっと拳を胸に当て、俯く。

    (お父さんの・・・本当の心を)


    風火は、小さな荷物をひとつ背負い・・・
    アストローナへ向かった。

    いつか、自分が強くなり、大切な者を持ち・・・
    本当に、父の事を理解出来るようになる為に。




       癒えない記憶     end






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