DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    癒えない記憶 -風火(3)
    2008-03-06 Thu 13:07
       癒えない記憶 ?ep.3




      巨大な、邪悪な気は形を成す。

    ・・・ある部分は手のような形に
    ・・・ある部分は人のような顔を持った物体に。
    そして、またある部分は


    ・・・鋭利な刃先に。



    「・・・っ」


    風火は完全に身動きを取れなくなっていた。
    いつもの彼女なら、その俊敏さで
    とっくにこんな包囲網を脱出していたはずである。
    が。

    風火の能力が・・・
    常人以上に研ぎ澄まされた「魔」を感知する能力が、
    皮肉にもその俊敏さを失わせることになっていた。

    それでも、「戦う意志」さえあれば、何とかふりほどき、
    反撃の機を伺うことは出来るかも知れなかった。

    しかし「人ならざる、完全な魔」との遭遇は
    初めての風火にとって、動けなくなるには十分すぎる恐怖が、
    彼女の心を支配してしまっている。


    「・・・やっ・・・いやあぁ・・・」


    修行を積んでいるとはいえ、まだ13才の少女の細い首。
    そこに黒い気の塊がまとわりつく。

    実体の無い、邪悪な塊。純粋な憎悪の念・・・

    風火は全身に鳥肌が立つのを感じながら、
    ただ震えることしか出来なかった。

    そして、どうにもならない自分が情けなかった。

    (お父さん・・・お兄ちゃん!!)


    《・・・キサマハ 生贄 ダ・・・》


    「く・・・ぅっ・・・」


    意識が遠のくのを感じながら、彼女は必至の抵抗を続けようとしていた。

    -----------------------------------------------------------


    ・・・それから、どのくらいの時が流れたであろうか。

    服は引き裂かれ・・・
    それでもか細く抵抗した風火の、
    体のあちこちには無数の切り傷が付けられていた。

    死んだように動かなくなった彼女は、
    ただ、だらりと体中を黒い塊に覆われて・・・
    もはや為すすべもなく宙に吊り下げられていた。


    《・・・コノ ムスメヲ 生贄 ニ・・・》


    《ワレ ハ 復活 ヲ ナシトゲヨウ・・・》


    鋭い針のような細い塊になっている部分が、
    風火の小さな唇に伸びていく。

    無理矢理に・・・
    血の気を失ってしまった唇へ、どす黒い塊が侵入しようとした。


    その時であった。


    《ギャアアアッッ・・・!?》



    瞬間。


    ・・・黒い「気」が、一閃される。

    風火の口内に侵入しようとしていた
    黒い塊が・・・真っ二つに切り裂かれた。

    痛みすら感じないと思われた、
    黒い、実体のない塊が、苦しんでいる。


    《グオオオ・・・コ・・・ コノ イタミ ・・・マサカ!?》


    「まだ、性懲りもなくこの世に未練があるのか・・・」


    《!? キ・・・ キサマ!!!》


    風火の冷たくなった体は、既に地に着地し、
    その黒い気から解放されていた。


    《マウ=ルシファード=ヤーナ・・・!!》


    淡いゴールドブラウンの、長い髪・・・
    端正で、それでいて冷たい光を宿したアメジスト色の瞳。

    ・・・その男は強大な「退魔」の力を、その身に秘めていた。


    《ヨウヤク デテ キタカ・・・コロシテ ヤル・・・!!》


    「・・・出来るのか?貴様ごときに」


    「マウ=ルシファード=ヤーナ」と呼ばれた、その男・・・
    父・沢神士狼は、ニヤリと笑みを浮かべ、
    片手に風火を抱いたまま左手で棍を構えた。

    「また、冥界に送り返してやろうか・・・

     いや・・・   


     いっそ、ここで消滅するか?」


    《オ・・・ オノレエエエッッ!!ワレヲ 愚弄 スルナ!!》


    ・・・暖かい気を感じ、風火が意識を取り戻した。

    (この腕・・・お父さん・・・?)


    体はまだ動かないが・・・父の気配を感じ、
    風火は全身から力が抜けるのを感じた。

    (アタシ・・・助かったんだ)


    いつの間にか、涙が頬を伝っていた。
    だが、その時であった。

    (・・・!!)


    風火は、自分を抱きかかえている父から・・・
    巨大な、「思念」を感じた。

    (お・・・とう、さん・・・?)

    (なっ・・・何?この、強い・・・
     けれど・・・

     とても、悲しい、気・・・!)


    動かない体。
    父の表情を見ようとしても、首すらも動かせない。
    その間にも・・・

    父の「思念」は、強烈に、風火の心の中に
    流れ込んで来る。


    (・・・俺を、殺してみろ・・・!!)

    「・・・!?」

    (殺せるものなら、殺してみるがいい!!)

    「・・・お父・・・さん」


    風火の声は声にならなかった。

    (・・・これは・・・

     「死」への  願望・・・?)




    ・・・重く、暗い気だった。

    優しい父。風火が話しかけると、
    必ず照れたように微笑む穏やかな父・・・

    風火にとって、父は世界で最も敬愛する対象だった。
    そんな父から風火の心の中に、大量に流れ込んでくる

    「負」の感情。


    (この人は・・・誰?)

    (アタシが知っている父は・・・お父さんは・・・?)

    (どうして、この人は・・・

       死にたがっているの!?)



    「貴様はここで、終わりだ・・・!」


    士狼は、ぐったりとしている娘をそばの木に寄りかからせると
    そのまま構え、臨戦態勢に入った。

    父の体が、黒い気の中に向かっていく瞬間・・・
    張りつめていた風火の意識が、衝撃と共に
    完全に途絶えた。





       癒えない記憶 ?ep.3    了





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