DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    癒えない記憶 -風火(1)
    2008-03-04 Tue 16:14
      癒えない記憶 ?ep.1




    思い出すのはいつも父の・・・背中。

    まるで秋の紅葉にこぼれる、太陽の光を宿したかのような
    淡いゴールドブラウンの髪。
    腰の辺りまでさらりと伸びた、その髪の毛がふわりと風に揺れ・・・
    振り返った時の、精悍な顔立ちとは裏腹な
    はにかむような優しい笑顔。

    その瞳を覗き込むと、まるで紫水晶-アメジスト-のようだと思った。



    「お父さん、大好きー!」


    風火がそう言うと、決まって父は頭をくしゃっと撫でて・・・
    夕暮れの中、肩車をして家に戻るのだった。

    風火は本当に大好きだった。父の全てが。






    ・・・あの時までは。

    -----------------------------------------------------------

    風火が武芸の修行を始めたのは、5歳の頃だった。

    その時7才だった兄の士皇が、
    毎日父と修行に出るのを羨ましく思い、
    無理矢理父に頼み込んで
    一緒に出るようになったのである。

    6才・・・7才。

    年月が経つにつれ、風火の武芸の才はみるみる花を咲かせていく。

    「風火・・・」

    「なあに?お父さん」


    父・沢神 士狼は、変わらぬ穏やかな口調で風火に語りかける。

    「もし・・・今日教える予定の、技・・・
     出来ないと思ったら、今日はこの辺で止めてもいいんだからな?」

    「・・・?どうして?お父さん。
     お兄ちゃんはその日に出来なくても、続けて練習するのに」

    「・・・いや・・・」


    父は困ったように口をつぐんだ。

    ・・・それから、何か新しい技を学ぶたびに、
    同じセリフを風火は父の口から聞くことになった。
    初めは・・・ただ、父が厳しい練習に気を遣って、
    こんなことを言っているのだと思っていた。
    だが・・・
    風火は年を重ねるごとに、父の真意が別にある、
    と何となく思うようになる。

    練習中ですら、決して声を荒げたことのない父。
    母の話では、父は一度も兄の士皇や自分に、
    怒鳴りつけるような声を出したことは無いという。

    「あれでも・・・以前は、好戦的で・・・
    敵意と憎しみをむき出しにして戦うような人だったんだよ?」


    母・・・風雷(フォンレイ)は、そういって、
    とても2人の子を持つ母親とは思えな い
    幼げな顔をほころばせ、ニッコリと微笑む。

    「まあ、でも私と2人で退魔の業をやる時は、
     まだそんな感じだけどね」

    「じゃあ、どうしてお父さんは、私たちにはあんなに優しいの?」


    士皇と風火は声を揃えて、母に問いかける。

    「・・・そうだね・・・あの人は・・・
    きっと、誰よりも辛い思いを背負って来たから・・・」


    母は・・・ちょっと、哀しげな表情を見せた。

    -----------------------------------------------------------

    ある日、両親が退魔業の依頼を受け、
    士皇と風火は2人きりで家に残ることになった。
    士皇はその時既に15才。
    13才になった妹も、もう留守番は出来る年齢だ。
    両親は心配することもなく、出かけていった。

    兄・士皇は小さな頃から物事が器用だ。
    それに几帳面な性格である。
    ・・・その日も何のことなく、朝ご飯を支度し、
    妹・風火が起きてくるのを待っていた。

    2人が大切に飼っている、鶏が生んだ卵で作った目玉焼き。
    自家製のじゃがいもで作られた、薄い塩味の、
    簡素だが優しい味付けのスープ。
    一生懸命に朝から生地をこねて焼いた、小さな丸いパン。
    そして、暖まったミルク。

    「遅いなあ・・・風火」


    目の前に並んだ食事を前に、冷めるのが気になる士皇がつぶやいた。
    ・・・先に食べていればいいのだが、それが出来ないのが兄の性分である。

    「仕方ない・・・」


    席を立ち、小さな家の2階にある、角の風火の部屋に登る。

    時間はそのわずか、数分前のことであった。
    風火は服を着替えて、兄の待つ一階へ降りようとしていた。

    物心ついた頃から・・・
    風火にはこの世のものならざるものの姿が見えた。
    兄も・・・もちろん、母も、父も、そういう能力者であったから、
    風火はこのことを少しも不思議に思っていなかった。
    それが、日常であり、普通だった。

    その日も・・・風火は目を覚ますと外に何者かの気配を感じた。

    (また、小さな「魔」の塊かな・・・にしては、イヤに多いけど・・・)


    曇った空。

    (ヤダなあ・・・こんな日は、「魔」の数が増える・・・)


    もう一度、兄の声が聞こえた。
    「はーい」、とそれに答え、服をのそのそと着替え・・・
    今度こそ、下に降りようとしたその時。

    「!?」


    彼女は、男の声に気が付いた。窓の外から・・・はっきりと聞こえる。

    (・・・キミは・・・)

    「誰?」


    風火が窓際に駆け寄り、小さく問いかける。

    (・・・キミは・・・僕の姿が、見えるのかい?)

    「うん。見えるよ?貴方は誰?」

    (・・・お願い・・・僕を助けて)

    「助ける?えーと・・・どうしたの?」

    (お願い・・・僕についてきて・・・)

    「・・・」


    その男から、魔物の気配は感じられない。
    それに、その男は体を持たない幽体の身ではあったが、年は20才前後、
    栗色の髪で、整った顔立ちをし・・・何よりも穏やかな瞳をしていた。

    (・・・この人、肉体をどこかに捕らわれているのかも知れない)


    兄の慎重な性格とは裏腹に、純粋で、疑うことを知らない風火。
    ・・・その「謎の男の霊魂」があまりにも
    穏やかな性質だったせいでもあるのだが・・・
    その風火の素直な性格が、この事件の全ての発端となるとは。

    「いいよ。一緒に行ってあげる。困ってるんでしょ?」

    (ありがとう・・・)


    風火はひらりと、軽い身のこなしで2階から飛び降りた。
    -----------------------------------------------------------

    「風火」


    ドアの外から呼びかけるが、返事がない。

    「・・・風火」


    兄は絶対に妹の部屋には入らない。
    いつの頃からか、兄は妹に気を遣うようになっていた。

    「・・・」


    しかし、即座に彼は、いつもと様子が違うことに気が付いた。

    (おかしい・・・)

    部屋の向こうに、風火の気配がない。
    ・・・つい、数分ほど前まではあったはずの、妹の気。

    「・・・!」


    扉に鍵がかからないのは知っている。士皇はすぐさま、妹の部屋に飛び込んだ。

    「・・・風火・・・?」

    そこに・・・彼が待っていた者の姿は無かった。

    (一体、何処へ・・・!?)





       癒えない記憶 ?ep.1    了






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