DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    2期689年9月
    2008-02-08 Fri 15:35
    「待ち合わせに不手際が有ったが…さすがに鼻が利くのう…」

    相変わらずの・・・耳に心地良く、澄んだ声。
    ・・・高くもなく、かといって低い音程でもない。
    例えて言うならば鈴の音のような・・・
    耳に不快なものを感じさせない、紅輝の声。

    「・・・」



    だが、紅輝の様子は明らかにいつもと違っていた。
    表情にはいつもの穏やかな様子はなく・・・
    むしろ、殺気さえ漂わせていた。

    警戒している俺に対し、まるで威嚇するように・・・
    紅輝の両手の爪が、紅く輝く。


    「最近、考えている事があるのじゃ…私は何故この国に来たのか…」

    「・・・?」

    「私は何故御主と出逢ったのか…そして、一つの考えに至った… 」

    紅輝の構えていた槍の穂先が・・・
    ごうっ・・・という激しい音と共に炎を帯びた。

    「私は私の中に眠る妖魔の力を討ち祓う為に
     御主と出逢ったのだろう…と」


    そして、それと同時に・・・
    紅輝の着物の背部が破れ、蝙蝠のような翼が現れる。

    「勿論、それが正しい答えなのかは分からぬ…
     持って生まれた力を有効に使う…それも一つの考えじゃろう…

     しかし、私はこう考える」

    「・・・!!紅輝・・・それは・・・!!」


    紅輝の白い肌に、あまりにも禍々しく浮かび上がる黒い影。
    その瞬間、紅輝の額には・・・

    「漆黒の角」が生えていた。


    「人の世で人として生きるのなら…
     人の扱える力だけで生きるべきじゃとな………
     故に私は御主と全力で戦う…

     私が“人”として生きる為に! 」

    「人、と・・・して?」


    あまりに急な出来事。
    今まで友人として・・・仲間として。
    戦友として戦ってきた大切な人と、こうして相対している
    ・・・この状況。

    だが、わかっていることがある。
    それは・・・



    「紅輝の中に、人のものとは異なる力が存在する事」

    「紅輝はその力を、捨てようとしている事」




    躊躇っている時間はなかった。
    俺は槍を構える。

    ・・・全力勝負。

    考えなければならないのは、これから彼女と・・・
    裁神紅“鬼”と化した彼女と、どう戦うか。
    それだけだった。


    「御主を殺すつもりはない…
     しかし、私も死ぬつもりはない………

     我が名は裁神紅“鬼”!
     護鬼の血を受け継ぐ者として…

     御主の退魔の技、全て受け止めてくれよう! 」



    禍々しい・・・が、美しく渦巻く炎をまとうように
    紅輝が気を高めた。
    ぴりぴりとした気迫に押されながらも、俺は彼女に応える。

    「紅輝・・・いつか本気の貴女と戦いたいと思っていた。
     そして、その時は来た・・・

     どういう理由であろうと、斬り合うからには
     本気でいかせてもらう!

     来い!!」


    ・・・俺が完全に戦闘体勢に入ったのを確認するように
    少しだけ微笑んだ(ように見えた)紅輝は、
    「暗鬼”紅姫”」を召喚した。

    「御主を呼ぶのは最期かも知れぬな… 」


    普段の戦闘であれば、俺は自分の退魔の力だけで
    戦ったのだろう。が・・・
    紅姫と、禍つ力をまとった紅輝の力に対抗するには
    もう1つの力が必要だった。

    ・・・それは、天上の「神獣」・・・

    (力を貸して下さい・・・)

    両手に満ちる、暖かな光。
    自分自身を媒体とし、天界魔討軍の力を呼ぶ、守護の法。

    「光と共に飛ぶ鳥の御使いよ!
     その光で、全ての邪気を打ち祓え!」


    輝く光の鳥・・・「マウルヤの告げ鳥」。
    告げ鳥が一迅の風のように、紅輝に向かって飛ぶ。


    「貴女に遠慮する必要は・・・
     さすがに、なさそうだ」

    「・・・!?」


    鳥の動きに目を奪われた、ほんの一瞬の間に。
    俺は鳥と共に、紅輝の目の前へと突っ込んでいた。

    一撃・・・二撃・・・三撃。
    なるべく致命傷を与えないよう、俺は槍で打ち据えた。
    とにかく、今は彼女を止める事が先決だから。

    「・・・っ!」


    短い気合いと共に、俺は紅輝のみぞおちを狙って
    槍を繰り出す。
    これが決まれば・・・恐らく彼女の動きを止められる。
    が・・・

    それはさすがに甘い考えだったことを
    俺は次の瞬間に思い知る。

    「させぬ!」


    紅輝は完全に、俺の動きを見切っていた。
    俺の突きを弾き返し、ひるんだ俺を守るように飛ぶ
    告げ鳥の攻撃を完全に無視し・・・
    そしていつも以上に煌めきを放つ紅の瞳で見据え、
    俺に鋭い突きを繰り出してきたのである。

    「小細工は無用…初手から全力じゃ!」

    「くっ・・・!」


    肩口に一撃。
    続けて一瞬で、腹部に突きを受ける。

    「・・・!」


    足を払いに来た三撃目を読み、ジャンプして躱した。
    態勢を立て直すため、後方へ飛び退る。

    (躱したものの・・・やはりいつもの紅輝よりも早い。
     この力も、あの・・・
     紅輝の額の「角」が影響しているのか・・・

     だとすると・・・)

    「告げ鳥よ!・・・狙え!」


    この戦いは、紅輝を倒す為の戦いではない。
    あくまでも・・・
    紅輝の命を守る為。
    紅輝に宿った「禍つ力」を、解き放つ為。

    「額だ!」


    光に包まれた鳥が、俺の声に呼応し
    紅輝の額めがけて飛ぶ。
    動きを止める為に、俺は一気に間合いを詰めて
    紅輝に一撃を繰り出した。

    「・・・くぁっ・・・」


    俺の一撃と、告げ鳥が額に与えたダメージで
    一瞬怯む紅輝。しかし・・・
    それは紅輝の「禍つ力」を祓うには
    まだまだ足りない程度のダメージに過ぎなかった。

    「・・・紅輝っ・・・!」

    「余力は残さぬ…全てを受けるが良い!」

    (来るっ・・・!!)


    周囲を燃やし尽くすかのように、燃えさかる「紅」の炎。
    それがどんどん輝きを増した。
    来る。
    彼女の・・・

    最大の一撃が。

    (だが・・・ここで倒れる訳にはいかん!)

    「はああああっ!!」


    いつもの冷静な彼女からは想像もつかない、
    熱をまとった・・・気迫に満ちた声。
    まるで空を舞うように、一瞬で間合いを詰める跳躍。

    「貴女の全力の攻撃を、4回も受けるなんて・・・
     さすがに考えたくないですからね。
     かといって・・・

     次の攻撃も受けたくはないですが」


    紅輝が全力で振り下ろした槍を・・・
    俺は「殲滅の鳳凰」で正面から受け止めた。

    (くぅっ・・・!)

    「・・・受け止めた、と・・・いうのか」


    近付く、うつろな表情をした・・・紅輝の顔。

    額の角から・・・いや、槍から・・・?
    それは余りにも美しく・・・
    不思議な炎だった。
    重みと共に、受け止める俺の両腕を焼き尽くすように
    燃え上がる炎が包んだ。

    「く、あっ・・・!!」


    これは、恐らく「幻」の炎。
    魔力によって生み出された「幻炎」は、
    戦闘後に直接ダメージを残す事はない。
    妖魔と相対する時は、この「幻炎」か「本当の炎」かを
    見極めるのも重要になってくる。

    ・・・が・・・
    この炎は違っていた。

    「幻」とは言い難い痛み。
    恐らく・・・

    紅輝そのものの持つ、「本来の力」が
    その炎には加わっていたのだろう。

    最大の一撃を受け止めたものの、俺は両腕に
    ダメージを負い膝をついた。

    「はぁっ・・・はぁっ・・・」


    ダメージは両腕だけで済んだ・・・が、
    想像以上の痛み。
    そして、紅輝は・・・動けない俺に対して
    とどめを刺そうとするかのように、
    炎の槍を振り下ろそうとしていた。

    (受ける訳には・・・いかない!)


    だが、既に・・・
    俺の体に連撃を繰り出す余力は残されていなかった。

    (この一撃に・・・全てを込める!)

    「打ち祓う・・・紅輝の力・・・
     
     その、角と共に!」


    膝をついた俺の首元に、振り下ろされた紅輝の槍。
    が、しかし・・・
    俺はそれを地面に伏せ転がる事で、躱し切る。

    そして、転がり、横倒しになった態勢のまま・・・
    死角である紅輝の足下から、腹部の方へ槍を打ち上げた。

    「うっ・・・く!」


    みぞおちに完全に攻撃を受け、崩れる紅輝の体。
    そして・・・
    告げ鳥が舞い、紅輝の角を・・・へし折った。

    「・・・紅輝・・・」


    ゆっくりと崩れ落ちる紅輝の体を、受け止める。

    「見事じゃ………私は…この角を………
     折られる…為に……… 」



    小さく・・・
    優しげに呟く、紅輝。
    その瞳には・・・もう、「禍つ光」など、灯ってはいなかった。

    (良かった・・・)


    ホッとしたと同時に、俺の体からも力が抜けた。
    紅輝はとっくに意識を手放していて・・・
    先ほどまでの邪気は感じさせる事なく・・・いつもの、
    涼しげな様子の彼女に戻っていた。

    「・・・勝った・・・のか。」


    座り込んで、何とか残る力で受け止めた彼女を横たえ
    ・・・少し照れくさい気もしたが、そんな事を
    言っている状況でもなく。
    彼女の頭を、自分の膝の上に乗せてTGを待った。

    落ち着けるように、ふう、とため息をつく。
    髪の毛をくしゃっとかきあげて、空を見上げ・・・
    思わず言葉を漏らした。

    「・・・こんなギリギリの戦い・・・
     あまり何度もやれるものでは、ない、な・・・」







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