DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    癒えない記憶 -散逝花(4)
    2008-02-03 Sun 09:12
    乾ききらない、血の絨毯の上に・・・
    さらに上塗りされる鮮血の赤。

    目に飛び込むのは、それだけ。




    最後に息をしていた者の心臓を貫いた腕を、引き抜く。
    締め付ける筋肉の感触が緩くなる。
    即死した男の体が動きを止め、床に落ち・・・
    ぶしゅっという音と共に、残っていた血が一瞬噴き出し
    後は体を伝わり、ぼたぼたと床に垂れ流された。

    ・・・腕にまとわりつく生暖かさに、身震いする。

    白んで来た空。
    外から小鳥のさえずりが聞こえてくる。
    が・・・
    そんなものは、何処か遠い、別の世界の出来事のように思える。

    まだ「死」という名前の「静寂」が
    ・・・この空間の全てを支配していた。

    「・・・・・・・」


    血まみれの・・・先ほどまでは人間の姿をし、
    息をし、動いていた者の体の間で
    隠れるように、震える子供たち。

    もはや泣く事さえも出来なくなっていた。

    ゆっくりと、彼らに近付く。

    放っておけば、いつかは、この子たちも
    「奴ら」と同じように成長しない、とは限らない。

    今、ここで

    とどめを刺しておけば


     刺 せ






    ゆっくりと右手を振り上げた、その瞬間だった。

    「やめて・・・!
     ぼくはどうなっても、いいから・・・

     弟を助けて!」


    ・・・その言葉を聞いた、その時・・・

    俺の中で、閉ざされてしまった、何かが


    捕えられていた「心」が、動き出した。



    「うっ・・・
     うぁぁ・・・!!

     ・・・うぅ・・・!!」


    涙が溢れ出していた。

    震えながら、後ずさる。
    血でべとべとになった手で、顔を掻きむしるように
    何度も押さえながら・・・
    首を振る。

    「これは・・・

     これは、俺が・・・!?」


    止まらない涙に滲む目で・・・
    周りを見渡した。
    がちがちと歯が音を立てる。
    そしてその音だけが小さく響き・・・

    全てのものは、止まってしまっていた。



    止めたのは・・・





    自分。



    「ああっ・・・あああああああ!!」

    俺はそのまま、崩れるように床に突っ伏し・・・
    ただ泣き叫んだ。

    大切にしたかったもの。

    守りたかったもの。


    それは、紛れも無く

    「彼ら」ではなかったのか?





    ----------------------------------------------------------------
    「久しぶりに・・・夢に見たな」

    ぼそり、とそう呟くと・・・
    気怠い体を起こした。
    髪の毛にくしゃっと指を差し入れ、かきあげる。

    20数年前の「トラウマ」と言ってもいい出来事・・・
    それは、長い年月を生きてきた事もあってか、
    もうほとんどそうは思えなくなっている。

    が、こうして忘れた頃に・・・
    まるで「忘れさせない」かのように、鮮明に夢に見る事がある。
    忘れるつもりはない。
    あれは、自分の過ちなのだから。

    けれど・・・

    今でも疑問に思う事がある。


    「父は・・・
     どうして、全ての人々を守りたいと思っていたのか」



    今の自分は、あの頃のように
    「全ての人間」を守ろうとは思っていない。

    妖魔の友を持った事もきっかけの1つにはなっているが、
    人間も妖魔も・・・
    そんなもの関係ない、大事なのは「中身」だ、と。
    今ではそう、思っている。

    だから今、目の前に
    「自分や仲間に害を成そうとする人間」がいれば
    容赦なく斬るし・・・
    躊躇う事なく、「斬れる」と言い切れる。

    逆に・・・
    害を成そうとしない妖魔がいれば、
    「退魔」することは考えられない。

    だが・・・

    父は違っていた。



    ただ、ひたすらに技を磨き・・・
    魔物を退魔し・・・
    家族と、人々を守ろうとしていた。

    少しだけ聞いた事があるが・・・
    父の父・・・俺の祖父にあたる人物は、魔物に取り憑かれた後
    とても口では表せない程の酷い殺され方で、息絶えたらしい。

    そして、父自身も過酷なまでに苦しい生き方をしてきた
    ・・・と、かつて母から聞いた事があった。

    恐らく、俺に起こった「トラウマ」など
    父と比べれば、ほんの通過点に過ぎないほどの
    出来事なのだろう。
    それほどに・・・
    父は苦しい生き方をしてきたのだと思う。

    でなければ、誰にも、何の感謝もされず、
    自らの身を危険にさらすだけの
    無償の影の仕事・「退魔」・・・

    そんな事が出来る訳がない。



    (こうして同じように戦っていれば・・・

     いつかは、父のように、全てを・・・

     優しく思えるようになる日が
     ・・・来るのだろうか)


    まだ煌煌と星の輝く空を見つめ・・・ゆっくりと瞳を閉じる。
    記憶の中の、父の穏やかな瞳を思い起こしながら・・・
    俺は再び眠りに落ちていった。



    (癒えない記憶 -士皇-/完)





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