DK3という定期更新型ゲーム内の舞台「イブラシル大陸」で旅をしていた「沢神」を名乗る退魔師の一族が、旅で感じた事などを書き留めてあります。
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    癒えない記憶 -散逝花(1)
    2008-01-31 Thu 18:14
    (・・・っ。これは・・・?)

    入った瞬間、つん、と鼻につく・・・
    初めて感じる「酒」という飲み物の匂い。

    (・・・苦しい)

    眉間にしわを寄せながら、店の奥にあるカウンターへ急ぐ。
    まだ夕方だというのに店内はもう活気に満ち溢れていた。
    上品と言うには余りにもほど遠い、旅人や、兵士たちの騒ぐ声。

    (・・・)

    アストローナという地に到着したのは、ほど前の事だった。
    一週間の船旅を終え、朝方頃に陸に着き・・・
    そのまま港町を山側に抜け、街道に出てしばらくの所にある宿場に入った。




    (町とは・・・こんなに人が多いものなのか)

    港から船に乗るまでの間も、あまりの人の多さに絶句したものだが・・・
    船を降りて、新天地に辿り着いた時の驚きは、その比ではない。

    16歳になり、この地へ来るまで・・・
    家族以外の人間と会った事も、話した事さえもなかった。
    ・・・両親から、それなりの「外界」の知識は与えられてはいたものの
    見ると聞くとでは、まさに大違いである。

    (大丈夫・・・なのだろうか)

    故郷を離れた時から膨らんでいた「不安」は
    段々と心の中で、その比重を増しているように思われた。

    本当に、この新しい地で「退魔の業」は身に付くのだろうか。
    そしてその「力」を、本当に人々の為に役立てられるようになるのか。

    (・・・)

    そんな不安を隠せないまま、カウンターの奥にいた
    この宿場の主人であろう初老の男・・・に声をかける。

    「あの・・・」

    「ああ?泊まり客かい?・・・えーと・・・」

    一瞬、この宿場の宿泊名簿をぱらぱらとめくっていた
    主人の手が、自分の姿を目にした瞬間、止まった。

    「・・・?」

    「いや、えっ・・・と。アンタ・・・すまないが、歳は?」

    「16です」

    「・・・「冒険者」ってヤツ、だよな?」

    「・・・一応・・・そうなります。何か?」

    そう答えた瞬間、主人の表情がホッとしたように緩む。

    「すまんな。ひょっとして、この宿で春を売るのかと勘違いした。
     そうだったらお断りしようかと思っていたよ。
     この店は健全な、「酒」を飲ませる社交場だからな!」

    「・・・?春を、売る?」

    主人が豪快に笑い飛ばす。体格がいいだけに、笑い声も大きい。

    「何だ、16にもなって、そんな事も知らねえのか!
     ・・・まあ、いい。
     泊まりだったら、今日は丁度いい事に安いのが一部屋空いてるぜ。
     金は前金。
     荷物の管理は個人管理になってる。
     
     ・・・じゃあ、この名簿にサインしな」

    すんなりと宿泊交渉は成立した。
    料金を支払い、鍵を受け取る。
    1階が酒場と、店の主人や従業員たちの部屋。
    そして通されたのは2階。
    町外れの街道にある宿場にしてはかなり大きな建物で、
    ざっと見渡しただけで10は部屋の扉があるだろうか。

    「どうぞ、ごゆっくり」

    宿の案内をしてくれた、若い女性が部屋の前で軽く会釈し
    再び1階に戻っていった。
    通された部屋の窓から、まだ雪の消えない山岳が見える。

    「・・・」

    扉の鍵をかけ、1週間の船旅で揺れるベッドの感触に慣れていた俺は
    久々の揺れないベッドに倒れ込む。

    目まぐるしく変わる環境。人。
    あまりにも激しい変化に、最初は戸惑うばかりで・・・
    けれど、人心地ついてようやく考える余裕が出て来た。

    (・・・これから、何年かかっても・・・

     俺は父を越える退魔師になって、
     人々を魔物たちから守ってみせる)

    そんな事を考えながら・・・
    俺はゆっくりと深い眠りに落ちていった。





    (第1話・了/2話に続く)




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